市場を支配するものは……

私が日頃驚くことは、ほとんどの人間が「経済合理性」に従っていないということである。

経済合理性に従えば新車のプリウスは売れず、10万円台の中古セダンが売れるはずだからである。

生命保険など入らないはずだからである。

人はつねに誤った選択をする。
私はこれを世人の「無知」「無思考」のせいだと考えていた。

ただマルクスによればこれは「宗教的信条」あるいは「呪術」のせいなのだという。

マルクスが資本主義経済の現実を人間の「精神」の側からフェティシズムと呼び、それを宗教的「無幻境」と規定したことは、彼の資本主義像の重要な一端を漏らしている。日常的意識では経済合理性の世界とみなされている現実が、実際には宗教的世界、「幽霊のごとき」世界、つまり価値現象という化物が跳梁跋扈する世界であることを、フェティシズム論(具体的には、商品・貨幣の価値形式の理論)は、指差しているのである。 
この世界は単に転倒しているのではなくて、「魔術にかけられた世界」であって、したがって資本主義的生活様式が支配する市民社会とは、卓踊術で机が踊る「交霊術の世界」なのである。(「現代思想の源流」今村仁司)

市場を支配しているのはアダム・スミスの経済モデルのような合理性ではなく、宗教あるいは呪術ということだろうか。

突飛だけど、感覚的には首肯できる内容である。

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